2026年5月29日金曜日

『ワーシング年代記2 キャピトルの物語』 オースン・スコット・カード

カードのデビュー作「ライフループ」を含む、『神の熱い眠り』を補完する短篇集

■裏表紙より抜粋
銀河帝国の首都キャピトルでは、人工冬眠薬ソメックが人々の関心を集めていた。ソメックを投与された人間は数年ごとに睡眠と覚醒を繰り返し、ほとんど永遠に生き続けることができるのだ。だがこの偽りの不死が、大いなる悲劇をもたらすことになろうとは……?

■感想
本書は、<ワーシング年代記シリーズ>の2巻にあたりますが、1巻の登場人物を深掘りする短編6作品から成る「第一部 キャピトルの物語」と、1巻の原型となる短編3作品から成る「第二部 ウォーターズの森の物語」の二部構成になっています。
1巻と同様、SF的要素は「ソメック(冷凍睡眠)」のみで物足りなさを感じますが、カードの原点にあたる作品のため、エンダーの兄ピーターやビーンの宿敵アシルを思わせるキャラクターが登場することが面白さの一つです。
(THE WORTHING SAGA by Orson Scott Card, Copyright 1978,1979,1980,1982,1989,1990. 1995年発行)

★★



2026年5月28日木曜日

『ワーシング年代記1 神の熱い眠り』 オースン・スコット・カード

カードの原点といえる長篇。SF的要素は少なく神話的だが、後の作品『死者の代弁者』などにも通じる読後感

■裏表紙より抜粋
あらゆる苦痛が瞬時に癒され、不幸や恐怖の存在しない世界―少年レアドが暮らすその世界に突如<苦痛>が蔓延した朝、人々の前に不思議な男が現われた。男はジェイスン・ワーシング、伝説の神と同じ名の持ち主だった。

■感想
本書は、<ワーシング年代記シリーズ>の1巻です。
SF的要素は「ソメック(人工冬眠薬)」と「宇宙船」が少しばかり登場しますが、中世ヨーロッパの僻地を舞台としたような世界で、読後感は神話に近いです。
ジェイスン・ワーシングの一万五千年以上にわたる波乱の人生を、ジェイソンに語らせるのではなく、僻地の鍛冶屋の息子に夢を通じて伝達して書き留めさせる、という構造が面白さを最後まで持続させています。
また、カードの原点にあたる作品のため、後の作品のキャラクターの原型やストーリー展開を思わせる節があるのもファンとしては面白いところでもあります。
(THE WORTHING SAGA by Orson Scott Card, Copyright 1978,1979,1980,1982,1989,1990. 1995年発行)

★★★


■ワーシング年代記シリーズ
・『神の熱い眠り』(Copyright 1978,1979,1980,1982,1989,1990. 1995年発行)
・『キャピトルの物語』(Copyright 1978,1979,1980,1982,1989,1990. 1995年発行)

2026年5月13日水曜日

『ミネルヴァ計画』 ジェイムズ・P・ホーガン

並行宇宙をテーマにすることで、世界線A・B・・・が拡散・収束される


■帯より転載
『星を継ぐもの』シリーズ
堂々の最終巻!
シリーズ累計266刷154万部突破!
2024年創元SFオールタイム・ベスト読者投票第1位

■感想
本書は14年振り(日本では18年)に刊行された《巨人たちの星(星を継ぐもの)シリーズ》の5作目にして最終巻です。
本作は「並行宇宙(Bの世界線)のハント博士から本書の世界(Aの世界線)のハント博士へ通信が入る」ことから物語は始まります。
SFの面白さの一つに、異星人・文明などの地球以外の何かに遭遇する面白さがあると思いますが、並行宇宙とのファーストコンタクトは本書の世界線やメタ的視点の読者の世界線と近くにあり過ぎてしまい、一つの面白さを欠いているよう感じられます。
しかし、ホーガンのストーリーテリングの力は衰えてはなく、次から次へと新たな問題・解決・視点などが展開される面白さは健在です。
そして、冒頭にある「収束」がきちんと結末に回収されるのもさすがです。
(Mission to Minerva by James Patrick Hogan, Copyright 2005. 2024年発行)

★★★