2026年7月21日火曜日

『火星の人』 アンディ・ウィアー

予期せぬ事故で火星に一人残された主人公。ユーモアとポジティブな性格が、本来であれば悲壮になりがちな物語をポップにし、一気読みさせる面白さ

■帯より転載
20世紀FOX映画化決定!
赤い惑星で展開される『ゼロ・グラビティ』のリアル
予期せぬ事故で火星に取り残された一人の宇宙飛行士。
彼は残る物資、自らの知識と技術を駆使して生き残れるのか!?

■感想
有人火星探査中、予期せぬ事故で火星に取り残された一人の宇宙飛行士、マーク・ワトニー。
不毛な赤い惑星に一人残されたマークが、限られた物資、自らの知識を駆使して生き延びるための苦闘(一人称)と、NASAによる救出作戦の立案実行(三人称)が並走する構成です。
そして、次から次へと起こる困難は突飛なことではなく、マークのちょっとしたミスや現在の技術で起こるべくして起きたもの、火星環境などから起こったものであり、本作にリアリティをもたらしています。
また、マークのユーモアとポジティブな性格が物語をポップにすると共に、マークに感情移入し、奮闘を応援するような感覚で、時間を忘れて一気読みすること請け合いです。
(THE MARTIN Andy Weir, Copyright 2011. 2014年発行)

★★★★

2026年7月20日月曜日

『アルテミス(上・下)』 アンディ・ウィアー

前評判に違わぬ面白さ。人類初の月面都市アルテミスを舞台に、不可能ミッションが主人公に次から次へ降り注ぐ

■帯より転載
20世紀FOX映画化決定
今度は月だ!
全世界累計300万部突破『火星の人』(映画化名「オッデセイ」)に続く待望の第二作。

■感想
人類初の月面都市アルテミス、6分の1重力下で主人公が次から次へと降り注ぐ不可能ミッションに夢中になること間違い無し。
直径500メートルのスペースに建造された5つのドームに2,000人の住民が生活するアルテミスという舞台背景がしっかりと設計されています。
その中で、合法/非合法び品物を運ぶポーターとして暮らす女性ジャズ・バシャラが、大物実業家から謎の仕事を受けることから、都市の未来を左右する陰謀に巻き込まれていきます。
その矢継ぎ早の展開に時間を忘れ、1日で上下巻を読んでしまいました。
(ARTWMIS A Novel by Andy Weir, Copyright 2017. 2018年発行)

★★★★


2026年7月17日金曜日

『時空いちびり百景』 かんべむさし 堀 晃

関西の地名を題材としたショートショートのため、関西圏以外の読者にはその土地ならではの空気感が掴めないのが残念

■帯より転載
宇宙初の関西SF!
毎日新聞連載「SFいちびり眼鏡」改題
笑いとロマンの地名づくし。
ショートショートがたっぷり105篇

■感想
あとがきによると本書は「毎日新聞の木曜夕刊の関西版に、かんべむさし、堀晃の交代執筆というスタイルをとりました。気がつけば、どう解釈してもSFではない作品をいくつか書いており、この本は堀とっては初のノンSFを書いた画期的な作品集となります」。
また、「いちびる」とは、調子に乗ってはしゃぐ。ふざける。やかましく騒ぎたてる。とのことです。(大阪ことば辞典より)
関西の地名を題材としたショートショートのため、関西圏以外の読者にはその土地ならではの空気感が掴めません。
そのため、関東圏の読者にとっては面白さが半減しており、残念です。
(1989年6月発行)

★★

2026年7月10日金曜日

『漂着物体X』 堀 晃

著者の魅力である、深淵の宇宙の美しさ、星・文明・生命の死生観という普遍的な成分が少ないため、やや古臭さを感じる短編集

■帯より転載
ハードSFの鬼才
鮮烈な筆致で描く
最新宇宙恐怖物語

■感想
本書は表題作「漂着物体X」をはじめとした13篇が収録された短編集です。
著者の魅力は、宇宙の深淵、星・文明・生命の死生観という普遍的なテーマを扱っているため、発表から30~40年を経ても古臭くなく、その美しい世界観にあります。
本書は残念ながら、その成分は少なめのため、いささか古臭さを感じてしまいます。
ぜひ、後年、シリーズものをまとめた『地球環』(2000年発行)や『遺跡の声』(2007年発行)を読んでいただき、著者の描く美しい世界観・普遍的なテーマに触れて欲しい限りです。
(1989年9月発行)

★★★

2026年7月7日火曜日

『太陽風交点』 堀 晃

表題作「太陽風交点」はSF好きなら必読。愛と死、宇宙の広大さと美しさを堪能できる傑作

■帯より転載
詩情豊かな名篇
第1回日本SF大賞受賞作!

■感想
本書は<宇宙遺跡調査員>シリーズ2篇(太陽風交点、遺跡の声)、<情報サイボーグ>シリーズ1篇(骨折星雲)、他7篇(イカルスの翼、時間礁、暗黒星団、迷宮の風、最後の接触、電送都市、悪魔のホットライン)が収録された著書の初短編集です。
とくに表題作「太陽風交点」はSF好きなら必読です!
死んだはずの恋人の再会、漆黒の宇宙空間に大輪の花を開いたような太陽ヨット、知的生命体とのファーストコンタクトなどと短編ながらも、SFの醍醐味が凝縮されています。
それと共に、ハードSFとしてその美しくも広大な宇宙規模を実際に自分が理解・想像できてるような没入感は、80年代当初、ハードコアSFの若き旗手と呼ばれた著者の力量を存分に味わうことができます。
後年、《宇宙遺跡調査員》シリーズをまとめた『遺跡の声』(2007年発行)、《情報サイボーグ》シリーズをまとめた『地球環』(2000年発行)が発行されていますので、各シリーズをまとめて読みたい方は、そちらで通読すると、よりそれぞれの世界観に浸ることができます。
(1981年3月発行)

★★★★★ 

2026年7月4日土曜日

『恐怖省』 堀 晃

消えゆく星、生命などの死生観が根底に流れる美しいハードSF短編集

■帯より転載
本格ハードSF
第一回SF大賞作家の
待望久しいスペース・オペラ!
SFを知ると科学が身近なものになる

■感想
本書は<宇宙遺跡調査員>シリーズ3篇(蜜の底、沈黙の波動、ペルセウスの指)、<情報サイボーグ>シリーズ4篇(恐怖省、過去への声、蒼ざめた星の馬、宇宙葬の後)、他1篇(コスモス・クロック)が収録されたハードSF短編集です。
どの物語も、消えゆく星、文明、生命などの死生観が根底に流れる美しさを堪能することができます。
後年、《宇宙遺跡調査員》シリーズをまとめた『遺跡の声』(2007年発行)、《情報サイボーグ》シリーズをまとめた『地球環』(2000年発行)が発行されていますので、各シリーズをまとめて読みたい方は、そちらで通読すると、よりそれぞれの世界観に没入することができます。
(1982年6月発行)

★★★★ 

2026年6月29日月曜日

『輝石の空』 N・K・ジェミシン

<十分に体系化された魔法は科学と区別ができない>と著者のインタビューにもあるようにファンタジーがSFとも読み取れるようになる面白さを持つ最終巻

■帯より転載
古代絶滅文明の巨大な力を求め
最後の闘いがはじめる
『第五の季節』三部作堂々完結!
3年連続ヒューゴー賞受賞&
ネビュラ賞・ローカス賞受賞

■感想
本書は『第五の季節』三部作の最終巻です。
数百年ごとに文明を滅ぼしてきた<第五の季節>を永久に終わらせ、世界を救おうとする母エッスン。
同じ力を用いて、ただ一人の愛する人を救うために世界を滅ぼそうとする娘ナッスン。
二人の旅路が交差する中、<十分に体系化された魔法は科学と区別ができない>と著者のインタビューにもあるようにファンタジーがSFとも読み取れるようになる面白さがあります。
(THE STONE SKY by N. K. Jemisin, Copyright 2017. 2023年発行)

★★★

2026年6月24日水曜日

『オベリスクの門』 N・K・ジェミシン

地殻を操ることができるオロジェンである母エッスンと娘ナッスンの物語が並走することで、地球、失われた月、石喰い、守護者、オロジェン、人間と役者が出揃う第二部

■帯より転載
数百年ごとに
文明が破滅する世界で
苛烈な運命を背負った者たちの
戦いが始まる
前人未踏の三年連続ヒューゴー賞受賞シリーズ
『第五の季節』続編登場

■感想
本書は『第五の季節』三部作の第二部です。
ついに「第五の季節」が訪れ、破局的な地殻変動が地球を襲います。
地殻を操ることができるオロジェンである母エッスンが地下都市カストリマで奮闘する様子を中心に、同じくオロジェンである娘エッスンは父親に連れ去られ南極地方へと旅する様子が並行に描かれます。
地球と失われた月、石喰い、守護者、オロジェン、人間と役者が出揃うことで、種蒔き(伏線の張り巡らせ)は終わり、第三部での収束を期待させる内容です。
(THE OBELISK GATE by N. K. Jemisin, Copyright 2016. 2021年発行)

★★★

2026年6月17日水曜日

『赤い預言者』 オースン・スコット・カード

アメリカ軍と先住民インディアンとの闘争に巻き込まれる主人公。インディアンのリーダーである静と動の兄弟のキャラクター造形が魅力的

■裏表紙より抜粋
特別な力を授かって生を受けたアルヴィンは、ある日インディアンの預言者テンスクワタワに出会い、その兄タクムソーとともに旅に出発することになった。

■感想
本書は<アルヴィン・メイカー・シリーズ>の2巻です。
18世紀末のアメリカ開拓時代を舞台とした、SFではなくファンタジーです。
残念ながら3巻以降は未訳のため、アルヴィンの特殊な力はどう開花していくのか、活躍はこれから、というところで終わるのが残念です。
ただし、作者カードのキャラクター造形とストーリーテリングは相変わらず秀逸です。
とくに先住民インディアンのリーダーを務める兄弟は魅力的で、二人の動静に引き込まれていきます。
(RED PROPHET by Orson Scott Card, Copyright 1998. 1999年発行)

★★★


2026年6月13日土曜日

『奇跡の少年』 オースン・スコット・カード

18世紀末のアメリカ開拓時代を舞台とした、カード定番の「特殊な能力を持った少年の成長」ものだが、SFではなくファンタジー

■裏表紙より抜粋
18世紀末、北米大陸はヨーロッパ諸国の植民地として分割され、多くのアメリカ人が新しい土地を目指して西へと向かっていた。旅は危険に満ちていた。森には精霊が宿り、先住民が白人の頭皮を狙って潜んでいた。そんな森の奥深くで、特別な力を持った子供、アルヴィンが生まれる。

■感想
本書は<アルヴィン・メイカー・シリーズ>の1巻です。
7番目の息子の7番目の息子は特別な力を持って産まれる言い伝えと共に、主人公アルヴィンが産まれるところから10歳までが描かれています。
何度か主人公に厄災が降りかかりますが、特別な力によって回避されます。
それは、アルヴィンの命を狙う黒い影が近づいている証左でもあります。
話の舞台がほぼアルヴィン一家の家や山のため、主人公の冒険はまだ始まっておらず、2巻へのお楽しみとなっています。
(SEVENTH SON by Orson Scott Card, Copyright 1987. 1998年発行)

★★★


■アルヴィン・メイカー・シリーズ
・『奇跡の少年』(Copyright 1987. 1998年発行)
・『赤き預言者』(Copyright 1988. 1999年発行)
・『Prentice Alvin(Copyright 1989. 未訳)
・『Alvin Journeyman』(Copyright 1995. 未訳)
・『Prentice Alvin』(Copyright 1998. 未訳)
・『The Crystal City』(Copyright 2003. 未訳)
・『Master Alvin』(Copyright 2026. 未訳)