2021年11月4日木曜日

『ネットワーク・エフェクト』 マーサ・ウェルズ

アニメ絵の表紙に躊躇すると後悔します!初心者にもお薦めしたい2020年代のSFの魅力とテーマが詰まった警備ユニットの冒険譚

■帯より転載
ヒューゴー賞・ネビュラ賞・日本翻訳大賞受賞
『マーダーボット・ダイアリー』待望の続編
「やれやれ、
人間は勝手に死にがちです」
人間苦手、ドラマ大好きの”弊機”が帰ってきた!

■感想
本書は《マーダーボット・ダイアリー シリーズ》の第5章にあたる作品です。
主人公である弊機の成長も楽しみの一つのため、必ず第1~4章にあたる『マーダーボット・ダイアリー』から読むことをお勧めします。
本作を読み終えた第一声は「早く続きが読みたい!」です。
しかし、前半は第1~4章と同じく、警備対象である人間たちが人間らしく動いてしまうか故のトラブルに主人公の弊機(人型警備ユニット)も巻き込まれていく展開に、思わずパターン物では、と少し落胆しかけます。
ところが、後半の展開は思わず「疑ってすみません」と謝りまくりです。
思わぬキャラクターの登場、そう来たか!と唸ってしまう伏線回収、そこまで考えてシリーズタイトルを付けていたの?!等々、SFのエンターテインメントを存分に堪能することができます。
また、2010年代のSF作品に見られる「現代の世界情勢や課題を未来の世界で描く」傾向(どの時代の作品も同時性を持つという側面は普遍なのかも知れませんが)は、本作にもさり気なく下敷きとして世界観を構築していますが、表面を覆う弊機の活躍(面白さ)に目を奪われ、振り返れば感じる程度なのが良いところでもあります。
第6章『FUGITIVE TELEMETRY』は2022年刊行予定と巻末に記載されていたので、来年が待ち遠しい限りです。
(NETWORK EFFECT by Martha Wells Copyright 2020. 2021年発行)
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本作は2021年のヒューゴー賞を受賞したことで、ヒューゴー賞・ローカス賞・ネビュラ賞のトリプルクラウンに輝く。(2022/5/22追記)

★★★★