2021年7月5日月曜日

『マーダーボット・ダイアリー』 マーサ・ウェルズ

アニメ絵の表紙に騙されてはいけない!元殺人兵器が出会う起伏に富んだ様々な事件を淡々とアンドロイド目線の一人称が語る違和感(アンバランスさ)が生む面白さ

■帯より転載
ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞3冠
「冷徹な殺人機械のはずなのに、
弊機はひどい欠陥品です」
密かに自らをハッキングした人型警備ユニット“弊機”は
過去の重大事件の真相を追い始める・・・・・・本格SF!

■感想
2年前の店頭にて、アニメ絵の表紙(下左図)に触手が動かなった自分に後悔を抱かせる、ヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞3冠は伊達では無い本格SFです。
原著のような表紙イラスト(下右図)であれば、直ぐに手にしたはず。
あまり期待もせず読み始めたのですが、一人称の「弊機」(主人公のアンドロイドには名前が無く、自分のことを弊機と呼ぶ。原著の人称代名詞は"I")に違和感を覚えつつ、第一章を読み終えた時には馴染むと共に、これは確かに「日記」だと腑に落ちるのです。
人型警備ユニットである主人公と警備対象である人間たちに様々な事件が起こるエンターテインメントの面白さはもちろんあるのですが、アンドロイドの目線で淡々と描写される妙な違和感(アンバランスさ)に徐々に嵌まっていきます。
その違和感は解説(渡邊利通著)にもあるように、ロボット三原則の揺らぎが根底に流れているからかも知れません。
本作はシリーズの1~4章にあたるもので、短編と5・6章の翻訳が待たれるところであり、弊機の更なる活躍が早く読みたいです!
(THE MURDERBOT DIARIES -ALL SYSTEMS RED, ARTICIAL CONDITION, ROGUE PROTOCOL, EXIT STRATEGY- by Martha Wells Copyright 2017,2018. 2019年発行)

★★★★★

 

■マーダーボット・ダイアリー シリーズ
・#1『システムの危殆』(Copyright 2017. 2019年発行)
・#2『人工的なあり方』(Copyright 2018. 2019年発行)
・#3『暴走プロトコル』(Copyright 2018. 2019年発行)
・#4『出口戦略の無謀』(Copyright 2018. 2019年発行)
・短編『THE FUTURE OF WORK: COMPULSORY』(Copyright 2018. 未訳)
・短編『HOME: HABITAT, RANGE, NICHE, TERRITORY』(Copyright 2020. 未訳)
・#5『NETWORK EFFECT』(Copyright 2020. 未訳)
・#6『FUGITIVE TELEMETRY』(Copyright 2021. 未訳)