コンピュータ内部のマシン語を人がかみ砕けるようにアセンブリ言語へ変換したのと同じような感覚で、AIの思考を疑似体験できる
■新刊案内より転載
直径2億kmの巨大宇宙生命体との邂逅を描くヒューゴー賞受賞作「島」、意識を与えられた軍用ドローンの進化の果てをAIの視点から描く「天使」など、現代ハードSFを代表する著者による日本オリジナル短編集。
■感想
一体何を読んでいるんだ、と面食らうピーター・ワッツ節全開(誉め言葉)の短篇が半分。
残り半分はまだデビュー直後と見受けられる普通なSF作品で占められている、ピーター・ワッツ入門として最適な11編収録の短編集です。
出だしの『天使』は、軍用ドローンAIの一人称語りをロボットや機械の擬人化による手法ではなく、コンピュータ内部のマシン語を人がかみ砕けるようにアセンブリ言語へ変換したのと同じような感覚で、AIの思考はこのように構築されていくのではないかと説得力のある文体で描かれています。
そして『島』はいわゆるファーストコンタクト物ですが、まだ月までしか到達していない私たちに宇宙の壮大さと奥深さを想起させれくれる秀作です。
また、本作に収録された『ホットショット』『巨星』『島』は、長編『6600万年の革命』の前後譚でもあるので、両作を読むことでより深く世界を楽しむことができます。
(THE ISLAND AND OTHER STORIES by Peter Wats Copyright 1994-2014. 2019年発行)
★★★★