長きに渡る帝国の腐敗に、まだ何者でも無い主人公が巻き込まれて行く、というテンプレートなSFスペースオペラ。三部作の第一部では目新しさは見えず
■帯より転載
数学暦がすべてを支配する宇宙
若き女性軍人と、叛逆の天才。
ふたりは物理法則を超越する科学体系<暦法>を駆使して
巨大要塞の攻略に挑む–
新鋭の魔術的本格宇宙SF!
ローカス賞受賞
ヒューゴー賞・ネビュラ賞候補
■感想
「長きに渡る帝国の腐敗に、まだ何者でも無い主人公が巻き込まれて行く」という骨子に、近年のジェンダー思想や社会情勢等を組み込んだ本作は、どうしても同じ構造を持つ、2013年に発表されたアン・レッキーの傑作<叛逆航路シリーズ>と比べてしまうことになります。
2010年代ミリタリースペースオペラとしての同時性という側面を考慮しても、面白いけど斬新さ・ハッとする箇所は無かった読後感です。
「数学と暦により物理学を超越する世界」は欧米読者には目新しく感じたのかも知れませんが、アジア圏の読者には「易」の延長線上、または西洋科学では表せない東洋的世界観に近く感じてしまうのが要因の一つかも知れません。
第二・三部と続く中で、驚きを期待したいと思います。
(NINEFOX GAMBIT by Yoon Ha Lee Copyright 2016. 2020年発行)
★★★
■六連合シリーズ(2022年3月現在)
・『ナインフォックスの覚醒』(Copyright 2016. 2020年発行) ローカス賞
・『レイヴンの奸計』(Copyright 2017. 2021年発行)
・『レヴナントの銃』(Copyright 2018. 2022年発行予定)