2026年6月29日月曜日

『輝石の空』 N・K・ジェミシン

<十分に体系化された魔法は科学と区別ができない>と著者のインタビューにもあるようにファンタジーがSFとも読み取れるようになる面白さを持つ最終巻

■帯より転載
古代絶滅文明の巨大な力を求め
最後の闘いがはじめる
『第五の季節』三部作堂々完結!
3年連続ヒューゴー賞受賞&
ネビュラ賞・ローカス賞受賞

■感想
本書は『第五の季節』三部作の最終巻です。
数百年ごとに文明を滅ぼしてきた<第五の季節>を永久に終わらせ、世界を救おうとする母エッスン。
同じ力を用いて、ただ一人の愛する人を救うために世界を滅ぼそうとする娘ナッスン。
二人の旅路が交差する中、<十分に体系化された魔法は科学と区別ができない>と著者のインタビューにもあるようにファンタジーがSFとも読み取れるようになる面白さがあります。
(THE STONE SKY by N. K. Jemisin, Copyright 2017. 2023年発行)

★★★

2026年6月24日水曜日

『オベリスクの門』 N・K・ジェミシン

地殻を操ることができるオロジェンである母エッスンと娘ナッスンの物語が並走することで、地球、失われた月、石喰い、守護者、オロジェン、人間と役者が出揃う第二部

■帯より転載
数百年ごとに
文明が破滅する世界で
苛烈な運命を背負った者たちの
戦いが始まる
前人未踏の三年連続ヒューゴー賞受賞シリーズ
『第五の季節』続編登場

■感想
本書は『第五の季節』三部作の第二部です。
ついに「第五の季節」が訪れ、破局的な地殻変動が地球を襲います。
地殻を操ることができるオロジェンである母エッスンが地下都市カストリマで奮闘する様子を中心に、同じくオロジェンである娘エッスンは父親に連れ去られ南極地方へと旅する様子が並行に描かれます。
地球と失われた月、石喰い、守護者、オロジェン、人間と役者が出揃うことで、種蒔き(伏線の張り巡らせ)は終わり、第三部での収束を期待させる内容です。
(THE OBELISK GATE by N. K. Jemisin, Copyright 2016. 2021年発行)

★★★

2026年6月17日水曜日

『赤い預言者』 オースン・スコット・カード

アメリカ軍と先住民インディアンとの闘争に巻き込まれる主人公。インディアンのリーダーである静と動の兄弟のキャラクター造形が魅力的

■裏表紙より抜粋
特別な力を授かって生を受けたアルヴィンは、ある日インディアンの預言者テンスクワタワに出会い、その兄タクムソーとともに旅に出発することになった。

■感想
本書は<アルヴィン・メイカー・シリーズ>の2巻です。
18世紀末のアメリカ開拓時代を舞台とした、SFではなくファンタジーです。
残念ながら3巻以降は未訳のため、アルヴィンの特殊な力はどう開花していくのか、活躍はこれから、というところで終わるのが残念です。
ただし、作者カードのキャラクター造形とストーリーテリングは相変わらず秀逸です。
とくに先住民インディアンのリーダーを務める兄弟は魅力的で、二人の動静に引き込まれていきます。
(RED PROPHET by Orson Scott Card, Copyright 1998. 1999年発行)

★★★


2026年6月13日土曜日

『奇跡の少年』 オースン・スコット・カード

18世紀末のアメリカ開拓時代を舞台とした、カード定番の「特殊な能力を持った少年の成長」ものだが、SFではなくファンタジー

■裏表紙より抜粋
18世紀末、北米大陸はヨーロッパ諸国の植民地として分割され、多くのアメリカ人が新しい土地を目指して西へと向かっていた。旅は危険に満ちていた。森には精霊が宿り、先住民が白人の頭皮を狙って潜んでいた。そんな森の奥深くで、特別な力を持った子供、アルヴィンが生まれる。

■感想
本書は<アルヴィン・メイカー・シリーズ>の1巻です。
7番目の息子の7番目の息子は特別な力を持って産まれる言い伝えと共に、主人公アルヴィンが産まれるところから10歳までが描かれています。
何度か主人公に厄災が降りかかりますが、特別な力によって回避されます。
それは、アルヴィンの命を狙う黒い影が近づいている証左でもあります。
話の舞台がほぼアルヴィン一家の家や山のため、主人公の冒険はまだ始まっておらず、2巻へのお楽しみとなっています。
(SEVENTH SON by Orson Scott Card, Copyright 1987. 1998年発行)

★★★


■アルヴィン・メイカー・シリーズ
・『奇跡の少年』(Copyright 1987. 1998年発行)
・『赤き預言者』(Copyright 1988. 1999年発行)
・『Prentice Alvin(Copyright 1989. 未訳)
・『Alvin Journeyman』(Copyright 1995. 未訳)
・『Prentice Alvin』(Copyright 1998. 未訳)
・『The Crystal City』(Copyright 2003. 未訳)
・『Master Alvin』(Copyright 2026. 未訳)

2026年6月9日火曜日

『アビス(上・下)』 オースン・スコット・カード

映画『アビス』を下敷きとした、2,000フィートの深海からの訪問者とのファーストコンタクトもの。カード定番の「特殊な能力を持った少年の成長」とは全く違う赴き

■帯より転載
『ターミネーター』『エイリアン2』のJ・キャメロンが挑む、人間とETの深海ドラマ!
超大作映画化! ’90年3月全国ロードショー
監督=J・キャメロン
主演=エド・ハリス メアリー・エリザベス・マストラントニオ マイケル・ビーン

■感想
監督あとがきにあるように、本書は映画の単なるノベライゼーションではなく、映像では描き切れない深海からの訪問者たちの行動の意義付けや彩りを加えている「小説」です。
ベースとなるアイディアやプロット、キャラクター造形はJ・キャメロンに依るもののため、カード定番の「特殊な能力を持った少年の成長」を期待すると、肩透かしを食らいます。
『2001年宇宙の旅』の映画と小説のような関係性を狙ったようですが、映像的表現の先行や映画らしいストーリー展開のため、カードのファンとしては微妙な本書となります。
(THE ABYSS by Orson Scott Card based on an original screenplay by James Cameron, Copyright 1989. 1990年発行)

★★★