2020年10月4日日曜日

『叛逆航路』 アン・レッキー

フィリップ・K・ディックを思い出させる衝撃。三人称の代名詞が全て「彼女」で語られる・AIの肉体として同時並行に複数体存在する「属躰」・・・読み手により全く違う登場人物をイメージしているSFならではの読書体験

■帯より転載
「ニューロマンサー」を超える快挙!
デビュー長編にして7冠受賞!
ヒューゴー賞/ネビュラ賞
クラーク賞/英国SF協会賞
ローカス賞/英国幻想文学大賞/キッチーズ賞
自分自身すら失っても
“わたし”は戦い続ける
“彼女”のためにー
本格宇宙SFのニュー・スタンダード登場!

■感想
2010年代のベストSF!と言っても過言ではありません。
フィリップ・K・ディック作品を読んだ時の独特な違和感、「一体、何を読まされているのだろうか?」を久々に感じることができました。
三人称の代名詞が全て「彼女」で語られる(原著ではShe,Her)ことに最初は違和感を感じますが、読み進めていくうちに、主人公を含めた登場人物全ての性別・容姿が分からない=読み手が勝手に想像しているだけ=読み手が変われば想像している登場人物の造形が全く違うのではないか!と分かった時の衝撃は初読から5年経た今も変わりありません。
そして、主人公のブレクは宇宙戦艦のAIであり、その人格を4,000人の肉体に同時並行に共有する「属躰」という存在です。
まさしくユビキタス(遍在する・あらゆるところにある)であり、主人公の視点が同時並行に複数視点で無理なく語られていくのが、もう一つの面白さとなっています。
「彼女」と「属躰」と言うギミックを土台に、ブレクが戦艦も大切な人も失い、ただ一人の属躰として復讐を誓う・・・ストーリーも骨太であり、SFならではの面白さを堪能できます。
ただし、題名の翻訳は無理やり四文字熟語にしなくても良かったかと思います。
原題『ANCILLARY JUSTICE』の直訳「属躰の正義」の方が本書のテーマに沿っている感じがします。
以降の巻の邦題も同様に、無理やり感は否めません。
(ANCILLARY JUSTICE by Ann Leckie, Copyright 2013. 2015年発行)

★★★★★


■叛逆航路シリーズ(2020年10月現在)
・『叛逆航路』(Copyright 2013. 2015年発行) ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞
・『亡霊星域』(Copyright 2014. 2016年発行) ローカス賞
・『星群艦隊』(Copyright 2015. 2016年発行) ローカス賞
・『動乱星系』(Copyright 2017. 2018年発行)