■帯より転載
日本ハードSFを代表する傑作、初文庫化
銀河面を垂直に貫く、直径1200万キロ、
全長5380光年のレーザー光束の謎
星雲賞受賞作
■感想
少しばかり長いですが、私が好きなシーンを転載します。
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<マルドゥク基地>は人類にとっての最外基地に当たる。バビロニア・ウェーブの反対側に位置する唯一の基地なのだ。この電波望遠鏡は、その関連施設のなかでも、さらに隔離されたように、いて座方向の空間に浮かんでいる。その基地を背にし、反射鏡の凹面内部の空間に身を置けば、もう背後からの電波はいっさい入らない。
<マルドゥク基地>は人類にとっての最外基地に当たる。バビロニア・ウェーブの反対側に位置する唯一の基地なのだ。この電波望遠鏡は、その関連施設のなかでも、さらに隔離されたように、いて座方向の空間に浮かんでいる。その基地を背にし、反射鏡の凹面内部の空間に身を置けば、もう背後からの電波はいっさい入らない。
もし、基地からの緊急連絡が入ったとしても、マキタには絶対に-たとえばニュートリノによる通信装置でもない限り、届くことはないのだった。
太陽から三光日離れた空間に来て、はじめて発見した死角だった。
マキタは不思議な感慨を覚えた。
この瞬間、人類のすべてから切り離されて銀河と、宇宙と対面しているのだった。
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このような宇宙に対した際の人類の小ささや宇宙への飽くなき探求心や憧れを抱えつつ、読者の脳内に構築される、圧倒的に美しい深淵かつ広大な宇宙のビジュアル。
映像では表現しきれない、SFならではの読書体験が得られます。
導入から展開、結末まで全てが、人類が抱く宇宙への羨望に貫かれており、本作で味わえる宇宙観は、数あるSF作品の中でも逸品です。
(1988年11月発行, 2007年2月文庫化)
★★★★★
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