いつでも・どこでも・何でも・誰でもがコンピュータネットワークにつながる近未来
■帯より転載
ヒューゴー賞・ローカス賞受賞
全人類をマインド・コントロールする
細菌兵器開発をめぐる諜報工作
極めてリアルな電脳的近未来
■感想
Apple iPhoneの初代発売(2007年1月)の前年、日本ではSharp W-ZERO3(2005年発売)等の通信機能を持った小型端末が発売され、「ユビキタス(いつでも・どこでも・何でも・誰でもがコンピュータネットワークにつながる)」の概念が一般に浸透し始めた頃に発表されたのが本作です。
コンタクトレンズ型のウェアラブルコンピュータ、自由にコーディネイト(表示)できるウェア、アバターとリアルの混在、凄腕ハッカーの暗躍、そしてAIを超えた何か・・・など、現在の技術の延長線上にあるリアルなギミックが、絵空事の未来ではなく、地続きな近未来を感じさせます。
2006年時点では近未来であった設定ですが、そこから15年経た2021年現在には、Google Glass等萌芽したデバイスもあり、未来感としてのワクワクが薄れたことは否めません。
しかし、ストーリーの中心をなす3世代ファミリーの造形(老人の頑なさ、両親の親への感情、子どもの無邪気さ等)は通り一遍ではない多面性があり、その他の登場人物も含めキャラクターづくりには普遍的な深みを感じます。
(RAINBOWS END by Vernor Vinge, Copyright 2006. 2009年発行)
★★★