2020年12月13日日曜日

『歌う船』 アン・マキャフリー

乙女の心とチタニウムの身体を持つサイボーグ宇宙船の青春とも言える旅路。『夏への扉』に勝るとも劣らないロマンチックな古典SF

■裏表紙より抜粋
この世に生まれ出た彼女の頭脳は申し分ないもの、ところが身体の方は機械の助けなしには生きていけない状態。<中央諸世界>は彼女を金属の殻の中に封じ込め、宇宙船の身体をあたえた。優秀なサイボーグ船の誕生・・・彼女は嘆き、喜び、愛し、歌う

■感想
本作は6編から構成される連作短編集です。
冒頭の短篇の初出は1961年、いまから約60年前にも関わらず、読了後は『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン, Copyright 1966)に勝るとも劣らないロマンチックな余韻に浸ることができます。
身体が不自由に生まれたが、頭脳明晰のため、殻人(シェルパーソン)として生きることになった主人公ヘルヴァ。
金属の殻の中に脳を収め、神経の一本一本を制御装置に繋げられ、チタニウムの身体=宇宙船を操る、サイボーグ船となります。
生まれつきの不自由さと宇宙船が持つ飛躍的な移動の自由のジレンマをベースに、一人の乙女であるヘルヴァの言動・成長に一喜一憂させられます。
古典SFの傑作として、もっと多くの人に読んでもらいたい一作です。
(THE SHIP WHO SANG by Anne McCaffrey, Copyright 1969. 1984年発行)

★★★★


■歌う船シリーズ
・『歌う船』(Copyright 1969, 1984年発行)
・『旅立つ船』(Copyright 1992, 1994年発行) マーセデス・ラッキーと共著
・『戦う都市』(Copyright 1993, 1995年発行) S・M・スターリングと共著
・『友なる船』(Copyright 1992, 1995年発行) マーガレット・ボールと共著
・『魔法の船』(Copyright 1994, 1995年発行) ジョディ・リン・ナイと共著
・『伝説の船』(Copyright 1996, 1998年発行) アン・マキャフリー原案, ジョディ・リン・ナイ著
・『復讐の船』(Copyright 1997, 1999年発行) アン・マキャフリー原案, S・M・スターリング著