2020年7月2日木曜日

『エンダーの子どもたち(上・下)』 オースン・スコット・カード

ゼノサイド(異類皆殺し)・エンダーの3000年にも亘る長き旅の終着点であり、救済の物語。人たるものは体なのか、魂なのか

■裏表紙より抜粋
艦隊の到着まであと数週間となり、ルジタニアに住む三種類の知的生命体―人間、原住種族ペケニーノ、窩巣女王ひきいるバガーたちは、それぞれの形で生き延びる道を探ろうとするが・・・・・

■感想
本作(1996年)は《エンダー5部作》における4作品目にして、エンダーが主人公である正編の完結編となります。
2008年に『ENDER IN EXILE』(未訳)が発表されますが、『エンダーのゲーム』(Copyright 1985. 1987年発行)と『死者の代弁者』(Copyright 1986, 1990年発行)の間を繋ぐ作品のため、エンダーの3000年にも亘る長き旅はここが終着点です。
オースン・スコット・カードのWeb上では、『ENDER IN EXILE』を含めて《エンダー5部作(The Ender Quintet)》としています。
「エンダーの魂が3つに分かれ、3つの体を動かすことになる」というSFらしからぬ設定をSFらしい説明により、年老いた主人公エンダーに代わって、エンダーの魂を分かち合った残りの2人が物語を紡ぎます。
「3つの入れ物(体)に1/3づつの魂」であることが、ゼノサイド(異類皆殺し)であったエンダー自身とルジタニアの救済に繋がっていく展開を違和感なく読ませてしまう作者の力量は、さすがの一言です。
また、本書の重要な役割として遠い未来の日本・日本人が登場するのは嬉しいものでした。冒頭には、大江 健三郎(ノーベル文学賞受賞者)への謝辞があります。
(CHILDREN OF THE MIND by Orson Scott Card, Copyright 1996. 2001年発行)

★★★★