2020年7月1日水曜日

『ゼノサイド』 オースン・スコット・カード

SFを介し、「親と子」「神と子」「自身と他者」を問いかける

■裏表紙より抜粋
エンダー・ヴィッキンが死者の代弁者として植民惑星のルジタニアにやってきてから、三十年が過ぎた。人類に致命的な病気をもたらすデスコラーダ・ウィルスの蔓延を恐れるスター・ウェイズ議会が、ウィルスを惑星ごと殲滅しようと粛清艦隊を派遣。その到着が目前に迫っていた・・・・・!

■感想
本書は『エンダーのゲーム』(Copyright 1985. 1987年発行) 、『死者の代弁者』(Copyright 1986. 1990年発行)に続く《エンダー5部作(The Ender Quintet)》の第三部にあたります。
実年齢が60歳となったエンダーが物語のキャラクターとして動きが鈍くなり、読者としては少し寂しい気がする中、中国系の植民星パスで神の声を聞く者ハン・チンジャオとその秘卑ワンム、そしてエンダーの(血は繋がっていない)子どもたちが躍動し物語を引っ張っていきます。
さらにエンダーの忌み嫌う人物と最愛の人物までもが、超高速飛行技術の開発の副産物(次巻のフリ)として登場します。
エンダーたちのいるルジタニア(キリスト教・西洋的世界)と平行して進む、中国系の植民星パス(道教・東洋的世界)における物語が心地よい違和感を醸し出し、『死者の代弁者』と同じく静的な展開にかかわらず、ガラッと違う読後感を残します。
また、熱心なモルモン教徒である作者は本作にて「家族・親と子」、「神と子」、「自身と他者」を問いかけているような気がします。
(XENOCIDE by Orson Scott Card, Copyright 1991. 1994年発行)

★★★★