■裏表紙より抜粋
傭兵艦隊提督マイルズが回想する冒険の数々。1989年度ヒューゴー/ネビュラ両賞受賞作『喪の山』、遺伝子研究所に潜入する『迷宮』、敵星セダガンダ帝国の捕虜収容所から一万人を大脱走させる『無限の境界』の中編3作を収録。
■感想
本書は1986年から30年以上続く、マイルズ・ネイスミス・ヴォルコシガンを主に主人公としたスペースオペラ《ヴォルコシガン・サーガ》の4作目・中編集です。
『バラヤー内乱』(Copyright 1991、2000年発行)訳者あとがきに紹介されている著者の言葉「シリーズのなかの本は、それ自体で完成した物語であると同時に、成長せいていく構図のなかで独自の位置を保たねばなりません」のとおり、本作品だけでも・本作品からでも楽しむことができます。
かくいう私も気づかぬ内に『⑦バラヤー内乱』⇒『②自由軌道』(Copyright 1987、1991年発行)⇒『④無限の境界』と読んでいました。
本作品では、生まれつき身体に不自由があるマイルズが悪戦苦闘・活躍することで、道化師のように人々の心に入り、人とは何か・どこままでが人かなどの免罪符を、敵対するもの・周りの人々に・そして読者の私たちに突き付けてきます。
30年以上前に主人公の身体に不自由があることを設定したことに驚きつつも、多様性を尊重される現在においては先見性があり、だからこそ主人公の魅力が陰ることなく30年以上も続いているのではないかと思います。
(BORDERS OF INFINITY by Lois McMaster Bujold, Copyright 1989. 1994年発行)
★★★
■ヴォルコシガン・サーガ(2020年8月現在)
・『戦士志願』(Copyright 1986. 1991年発行)
・『自由軌道』(Copyright 1987. 1991年発行) ネビュラ賞
・『親愛なるクローン』(Copyright 1989. 1993年発行)
・『無限の境界』(Copyright 1989. 1994年発行) ヒューゴー賞/ネビュラ賞
・『ヴォル・ゲーム』(Copyright 1990. 1996年発行) ヒューゴー賞
・『名誉のかけら』(Copyright 1986. 1997年発行)
・『バラヤー内乱』(Copyright 1991. 2000年発行) ヒューゴー賞/ローカス賞
・『天空の遺産』(Copyright 1995. 2001年発行)
・『ミラー・ダンス(上・下)』(Copyright 1994. 2002年発行) ヒューゴー賞/ローカス賞
・『Dreamweaver's Dilemma』(短編, Copyright 1995. 未出版)
・『遺伝子の使命』(Copyright 1986. 2003年発行)
・『メモリー(上・下)』(Copyright 1996. 2006年発行)
・『ミラー衛星衝突(上・下)』(Copyright 1998. 2012年発行)
・『任務外作戦(上・下)』(Copyright 1999. 2013年発行)
・『外交特例』(Copyright 2002. 2014年発行)
・『大尉の盟約(上・下)』(Copyright 2012. 2015年発行)
・『マイルズの旅路』(Copyright 2010. 2017年発行)
・『女総督コーデリア』(Copyright 2016. 2020年発行)
・『The Flowers of Vashnoi』(Copyright 2018. 未訳)