壮大な物語は驚異のクライマックスを迎える!ただし、起承転結の承であり、さらに続く物語があることへの喜び
■裏表紙より抜粋
宇宙の蛮族アウスターから人類連邦を守るための壮絶なる戦いの火蓋が、いままさに切って落とされようとしていた。いっぽうハイペリオンでは、連邦の密命を受けた七人の男女が、ついに<時間の墓標>に到着していた。
■感想
本書は《ハイペリオン・シリーズ》の第2部です。
第1部『ハイペリオン』(Copyright 1989. 2000年発行)とは対の構造になっており、第1部に張り巡らされた数多くの伏線(謎)が見事に回収されていきます。
また、第1部は7人の巡礼者がそれぞれの物語を語っていく入れ子構造(特定の主人公がいない多視点)でしたが、本作は狂言回し(主人公的な登場人物)を立てることにより、ガラッと読み味が大きく変わりスピード感を増していきます。
主人公を立てることは単視点・ミクロな世界に縛られがちですが、そんな手法があったのかと言うべきレトリックで、アウスターと人類連邦の宇宙戦争、7人の巡礼者とシュライク、時間の墓標の謎などが多視点・マクロな世界で描かれます。
そして、狂言回しであった主人公の本当の役割が見えた時に判明する脅威の結末=回収感はさすがの一言です。
大きな回収感を味わうと通常は読了後の寂しさに陥るものですが、本書は本シリーズの第2部=起承転結の承でしかなく、この後さらに第3部・第4部と控えているのは嬉しい限りです。
(THE FALL OF HYPERION by Dan Simmons, Copyright 1990. 2001年発行)
★★★★★