2020年8月20日木曜日

『世界を変える日に』 ジェイン・ロジャーズ

主人公ジェシー(10代女性)と同じ性別か・年代・親子によって受け取り方が全く変わるであろう作品

■裏表紙より抜粋
バイオテロのため、子どもがもはや生まれなくなる疫病に世界じゅうが感染してしまった。十六歳のジェシーは慣れ親しんだ世界の崩壊を目撃する。彼女の父親ら研究者は治療開発に取り組むが、かろうじて見出されたワクチンには大きな問題があった。それを知った彼女がくだした決断とは・・・・・・。

■感想
訳者あとがきに紹介されている、著者が本作に込めたテーマ「勇敢な少女と、その英雄的行為が周囲に与える影響」と「子どもが人生で初めて真剣に親に反抗し、個人となる瞬間」は十分に感じることができます。
誰しもが10代の頃に持っていた・夢想していたであろう「世界を変えることができるかもしれないレベルの何でもできる感」を思い出させます。
主人公ジェシーのまっすぐな思いは、読み手の性別・年代などによって大きく異なってくるかと思います。
ただしそのまっすぐな思いは、新興宗教にはまり冷静な判断ができなくなってしまっているかにも感じられ、読了後も違和感が残りました。
また、「バイオテロにより新しい子どもが生まれなくなる」という社会背景(設定)のみが唯一のSF的要素であるため、SFとしての面白さは皆無に近いです。
著者が描きたいテーマのために、逆説的にSF的な社会背景が設定されたような気がします。
(THE TESTAMENT OF JESSIE LAMB by Jane Rogers, Copyright 2011. 2013年発行)