SF界一のヒロインは『夏への扉』のリッキィではなく、本作のアイネイアーと言っても過言ではない!
■裏表紙より抜粋
連邦の崩壊から三百年あまり、惑星ハイペリオンの狩猟ガイド・エンディミオンはかつての巡礼者・サイリーナスから、まもなく開く<時間の墓標>から現れる救世主を守ってほしいと依頼される・・・・・・
■感想
本書は《ハイペリオン・シリーズ》の第3部です。
『ハイペリオン』(Copyright 1989. 2000年発行)、『ハイペリオンの没落』(Copyright 1990. 2001年発行)で解き明かされなかった重要な謎が解決されるべく、更にスケールアップし、巡礼から300年後の物語の幕が開けることに驚きます。
<時間の墓標>から現れた救世主アイネイアー、彼女を守るべく奮闘する(まだ何ものでもない)青年ロール・エンディミオン、アンドロイドのA・ベティックによる星々を巡る(『オズの魔法使い』を準えた)旅が描かれていきます。
3つの月が上るマーレ・インフィニトゥス、超氷結状態のソル・ドラコニⅦなど、それぞれの星の描写は読者の想像力を掻き立てるような魅力に溢れています。
そして、本書においてはもう一人の主人公と言ってもよいようなデ・ソヤ神父大佐の不撓不屈な精神にて、アイネイアーを捕獲すべく執拗に後を追うべく航行が、アイネイアーたちの逃避行に幾度となくスリルを加味します。
また、SF界のヒロインとして一般的なのは『夏への扉』(ロバート・A・ハインライン, Copyright 1956)のリッキィかと思いますが、私の中では断然、本作のアイネイアーです。(次点は僅差で『サイティーン』(C.J.チェリイ, Copyright 1988)のアリ)
第3部・第4部における彼女の宇宙規模の言動と活躍、時間を超えた出会いと別れ、覆すことができない生と死、様々なエピソードが重なり合うことでヒロインとしての輝きが煌めき、長大な第1部・第2部は彼女のためにあったのではないかと思うくらいです。
初読から20年近く経た今でもその輝きは変わりません。
(ENDYMION by Dan Simmons, Copyright 1996. 2002年発行)
★★★★★