■裏表紙より抜粋
地球は恐るべきバガーの二度にわたる侵攻をかろうじて撃退した。第三次攻撃にそなえ、優秀な司令官を育成すべくバトル・スクールは育成された。あらゆる訓練で最優秀の成績をおさめた天才少年エンダーの成長を描く、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞の傑作。
■感想
アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)の主人公・碇シンジがサードチルドレンであったのは、本書の主人公アンドルー”エンダー”ウィッギンがサード(第三子)であったから、サードインパクトは第三次攻撃からと推測できるなど、本書は日本のSFアニメにも多大な影響を与えた作品と言えます。
主人公が自らをエンダーと名乗ることは、続巻で以下のような説明があります。
<彼がほんの幼児だった頃、彼の姉ヴァレンタインがアンドルーという名を発言できなくて、彼をエンダーと呼び(『死者の代弁者(上)』2トロンヘイムより抜粋)>
エンダー(Ender)は人類とバガーの戦争を終わらす(End)ことを最初から姉(または作者)に定義付けされていたのです。
バトル・スクールにおいて、最少年ながら知力を持って訓練に勝ち上がっていく様、大人たちから巧妙に仕組まれた様々な試練に打ち勝つ様など少年が一兵卒から指揮官へと成長していく様子をワクワクしながら読み進む中、残りページ数も僅かとなった時に突如訪れるバガー戦への勝利。
そのオチ(手法)には膝を打つばかりです。
そして最終章「死者の代弁者」(続巻と同タイトル)は静かな余韻と読後感を残します。
本書を読み終えたら、続巻『死者の代弁者』(Copyright 1986. 1990年発行, 2015年新訳版)も是非読むことを声を大にお薦めします。
そして、本書に登場するビーンの視点からバガー戦を描いた姉妹編『エンダーズ・シャドウ』(Copyright 1999. 2000年発行)も併せて読むと、腑に落ちなかった(読み切れなかった)点が解消され、『エンダーのゲーム』をより深く味わうことができます。
本稿を書くにあたって、旧約版(1987年)と新訳版(2013年)を読み比べてみましたが、個人的には旧約版の堅い文書の方がバガーとの戦争へと徐々に高まる緊張感を感じられるような気がします。
新訳版は(時代と共に変化していく日本語において)現在の日本語で書かれているため読みやすいですし、本書の面白さの根源は変わっていません。
(ENDER'S GAME by Orson Scott Card, Copyright 1985. 1987年発行)
★★★★★
■エンダーコレクション(2020年6月現在)
《エンダー5部作(The Ender Quintet)》:エンダーが主人公
・『エンダーのゲーム』(Copyright 1985. 1987年発行) ヒューゴー賞/ネビュラ賞
・『死者の代弁者』(Copyright 1986. 1990年発行) ヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞
・『ゼノサイド』 (Copyright 1991. 1994年発行)
・『エンダーの子どもたち』(Copyright 1999. 2001年発行)
・『ENDER IN EXILE』(Copyright 2008. 未訳)
《エンダーズ・シャドウシリーズ》:ビーンが主人公
・『エンダーズ・シャドウ』(Copyright 1999. 2000年発行)
・『シャドウ・オブ・ヘゲモン』(Copyright 2000. 2003年発行)
・『シャドウ・パペッツ』(Copyright 2002. 2004年発行)
・『SHADOW OF THE GIANT』(Copyright 2005. 未訳)
・『SHADOWS IN FLIGHT』(Copyright 2012. 未訳)
《Fleet School》
・『CHILDREN OF THE FLEET』(Copyright 2017. 未訳)
《Other Ender Stories》
・『FIRST MEETINGS』(Copyright 2003. 未訳)
・『A WAR OF GIFTS』(Copyright 2007. 未訳)
《The First Formic War》:Aaron Johnstonとの共著
・『EARTH UNAWARE』(Copyright 2012. 未訳)
・『EARTH AFIRE』(Copyright 2013. 未訳)
・『EARTH AWAKENS』(Copyright 2014. 未訳)
《The Second Formic War》:Aaron Johnstonとの共著
・『THE SWARM』(Copyright 2016. 未訳)
・『THE HIVE』(Copyright 2019. 未訳)