2020年6月26日金曜日

『侍女の物語』 マーガレット・アトウッド

女性作家が描く、女性の自由が奪われたディストピアSF。読み手の感性が問われる問題作

■裏表紙より抜粋
ギレアデ共和国の侍女オブフレッド。彼女の役目はただひとつ、配属先の邸宅の主である司令官の子を産むことだ。しかし彼女は夫と幼い娘と暮らしていた時代、仕事や財産を持っていた昔を忘れることができない。自由を奪われた近未来社会でもがく人々を描く、カナダ総督文学賞、アーサー・C・クラーク賞受賞作。

■感想
2019年のノーベル文学賞候補にマーガレット・アトウッドが挙がり、興味を持ったのが本書を読んだきっかけです。
出生率の極端な減少に伴う国の政策により、子どもを持たない政府高官等の一流市民に、子どもを産むことだけを目的とした侍女(経産婦)が与えられることになります。
侍女の条件は経産婦であること、つまり子どもや夫と強制的に別れさせられ、その職務を果たすことになるのです。
ディストピアSFの体をしていますが、本書のテーマははっきりとしており、日本を始めとした先進国の少子化の現状を背景に、未だガラスの天井があると言われている女性の地位や権利を深く深く考えさせるものとなっています。
その反面、SFとしての構造や面白さはおまけ程度なのが残念なところです。
(THE HANDMAID'S TALE by Margaret Atwood, Copyright 1985. 2001年発行)

★★★