2020年6月19日金曜日

『三体』 劉 慈欣

アジア圏&翻訳小説初のヒューゴー賞受賞。異星文明とのファーストコンタクトとオープンワールドゲームの相互作用が秀逸

■本書翻訳者、あとがきより
小説のテーマは、異星文明とのファーストコンタクト。カール・セーガンの『コンタクト』とアーサー・C・クラーク『幼年期の終り』と小松左京『果てしなき流れの果に』をいっしょにしたような、超弩級の本格SFである。

■感想
2010年の1年間、仕事で上海に滞在していた経験から勝手に思っていたことは「中国において正しいことはオリジナリティではなく、模倣でもよいので成功・結果を出すこと。模倣が積極的に許される価値観においてはオリジナリティ溢れるコンテンツは難しい・当分出てこない」。
本書を読んで、その考えは全くの見当違いだったことが判明します。
しかも、中国で単行本が発行されたのは2008年。
さらにアジア圏初のヒューゴー賞(2015年)も受賞していることに(日本人作家が未だ受賞していないことも含め)考えを改めた作品となります。
異星文明とのファーストコンタクトとしてミステリータッチなストーリーを軸に、現実世界にもありそうなオープンワールドゲーム「三体」の理不尽かつシュールなプレイ実況が途中途中に挟まれることがアクセントとなり、ページをめくる手を止めることができません。
ただし、主人公の職業が絡む異星文明との決着方法は力技であり、今までの知的・精密さは御座なりにされたような気がします。
(THE THREE-BODY PROBLEM by Liu Cixin, Copyright 2008. 2019年発行)

★★★★



■《地球往事》三部作
・『三体』(Copyright 2008. 2019年発行) ヒューゴー賞
・『三体Ⅱ 黒暗森林』(Copyright 2008. 2020年発行)
・『三体Ⅲ 死神永生』(Copyright 2010. 2021年春刊行予定) ローカス賞