■帯より転載
第1期・全6巻、隔月刊行
日本SF誕生60周年記念企画
「レオノーラ」「虎は暗闇より」ほか
初期中短篇10篇、
そして傑作長篇『サイボーグ・ブルース』
■感想
当時メディアミックス(書籍と映画など)を得意としていた角川書店による、映画『幻魔大戦』(1983年公開アニメ)の大量の広告で初めて平井和正を知ることになります。
書店に大量に平置きされた『幻魔大戦』(全20巻, 1979~1983年)と『真幻魔大戦』(全15巻, 1980~1985年)を一気に読んだのが原体験です。
しかし、小説で描かれているルナの美しさと反比例するかのような、映画版ルナのでこっぱち大友克洋デザインに気分が萎え、映画自体は結局未見のままです。
著書の作品の魅力は、圧倒的なキャラクター造作にあります。
SFの設定・ギミックはそんなに深くはないのですが、『ウルフガイシリーズ』(1971~1995年)の犬神明をはじめ多くの魅力的な主人公がいます。
代表作である『幻魔大戦』と『真幻魔大戦』は主人公・東丈以外の様々なキャラクターたちも立っており、群像劇・大河ドラマとしての面白さがあります。
また、(アメコミに代表される能天気なヒーローとは違う)圧倒的な力・超常能力を持つ反面、孤独に悩める主人公を生み出しました。
超常能力やバイオレンス、(初期作品における)疾走感やエンターテインメント全振りのストーリーを含め、現代のライトノベルの源流と言えます。
本書の肝は長編『サイボーグ・ブルース』(初出1968~1969年, 1971年発行)です。
4年振りに再読しましたが、約400ページを一晩で読み終える程の熱量です。
短編の積み重ね・他者視点によるパート差し込み等による、世界観の奥行きが良いです。
また、主人公の圧倒的な力と孤独の悩みもだれることなく心に響いてきます。
50年前の作品とは思えません。
(2018年2月発行, 1962~70年・1985年の作品を収録)
★★★★